2)遭難対策の現状と課題

 ①国内山岳遭難の概況

 2013年(平成25年)中における山岳遭難事故は警察庁統計によると、発生件数2172件(前年比+184件)、遭難者数2713名(前年比+248名)、死者・行方不明者320名(前年比+36名)となつており、発生件数・遭難者数、死者行方不明者のいずれも、統計の残る1961年以降で最多となった。
 遭難者と死者・行方不明者に占める60歳以上の割合は、遭難者46.4%、死者・行方不明者63.8%と過去5年間横ばいの傾向を示している。
 事故態様別では、未組織登山者や山菜取り等も含まれたデータのため、道迷い41.8%と多く、滑落17%、転倒145%と道迷いを除けば労山の事故態様とほぼ同様の内容となっている。
 また、山ガール、山ボーイの出現もあつて単独遭難者数も852件(39.2%)と多いのが特徴である。
 2014年5月連体の死亡事故は18件、行方不明が1件、北アルプス白馬岳。涸沢岳。
 立山連峰0人ケ岳等で発生している。このうち静岡の会員が御岳山で死亡している。
 9月27日、御岳山の噴火事故を契機に政府は、常時監視対象となっている47火山の地元自治体にたいして、登山届の提出義務化を検討するように求める動きを始めている。
 登山届の義務化は剣岳周辺、谷川岳の岩場ではすでに実施しているが、北アルプスを対象とした岐阜県条例も2014年12月から実施された。
 登山届の義務化については「登山は基本的には自己責任で楽しむもの、規制になじまない」との世論も少なくなく、登山者団体をはじめ、山小屋関係者や山岳ガイド団体など関連する多くの団体で議論が進むことが望まれる。

 ②労山内での山岳遭難の概況

 2014年の事故件数はここ数年横ばい状態である。又、2013年の死亡事故は14名であつたが、2014年は7件で10名に達した。
 内訳は男性8名、女性2名、県連別では岡山3名、広島2名、道央・和歌山。静岡。大阪。東京が各1名。
 ジャンル別では、雪山5名、夏期縦走3名、岩登り1名、病気1名となつている。
 死亡事故は何としても「ゼロ」にしなければならない。
 当該県連・会の真摯で客観的な事故原因の解明が同種の事故の再発を防ぐことは論を待たない。登山学校での事故も3件発生している。
 兵庫県連冬山登山学校では「凍傷」事故では「深夜までの雪洞堀り」に加えて、「事故後の処理の遅れ」と思われるなどの原因で事故者は指の一部を切断している。また、大阪中級登山学校では、リード中の講師が錫杖岳第一ルンゼで滑落・負傷している。
 さらに滋賀県初級アルパイン講習会では66歳男性の参加者が急病のため下山するという事態も起きている。
 登山学校や講習会は安全登山をめざすための教育山行であり、そこでの事故は根絶しなければならない課題である。
 ヘリコプターによる捜索や救助活動は年ごとに増え、2014年度、労山内では確認されただけで20件余りに上っている。
 長野県警の新規導入機の10名定員やいくつかの県での警察。消防の連携強化の動きなど今後、ヘリによる救助能力が向上することが予想される。聖岳では脳内出血を発症した岐阜の女性がドクターヘリの飛来で一命を取りとめている。
 我々は安全登山をめざすと同時に、まだまだ遅れているドクターヘリの配備も含めて「ヘリによる山岳救助体制の充実」を行政や国に対して要望することも重要となつてきている。